

本記事は、太田記念美術館にて開催される展示「歌川広景 お笑い江戸名所」を、皆様がより深く、多角的に楽しむための、私たち「黄昏探求舎」からのささやかな「探求のヒント」です。
公式の展示構成を「道標(みちしるべ)」としながら、時に大胆な独自解釈を交えることで、作品に秘められた物語の奥深さに迫ります。ここに記されたのは、あくまで一つの視点。本当の「答え」は、ぜひ、太田記念美術館にて、あなたの目でご確認ください。


全ての始まりは、夏目が見せた一枚の「転ぶ絵」
なあ、二人とも、これ見てくれよ!太田記念美術館のXで流れてきたんだけど、この雪道で盛大にすっ転んでる絵、最高じゃねえか?!


歌川広景
江戸名所道戯尽 十四 芝赤羽はしの雪中
歌川広景、か。データ上、歌川広重の門人でありながら、活動期間は3年弱の謎の絵師。
広重って、あの『東海道五拾三次之内』の?! すげえ人の弟子だったんだな!
専門家にも知られていない彼の作品が、現代のSNSでバズを発生させている。……極めて興味深い現象だ。
ふふ。師である広重が、静謐な『雪景色』を描いたのに対し、弟子の広景は、そこで無様に転ぶ『人間』を描いたわけだ。面白いじゃないか。この謎の絵師がなぜ令和の今バズるのか。その原因を、探求してみようか。
夏目が語る「これ、俺じゃん!」の共感力
だってよ、これ、どう見ても他人事じゃねえんだよな。犬に魚盗まれたり、蕎麦を頭からかぶったり。俺たちの日常と、何も変わらねえ。


歌川広景
江戸名所道外尽 壹 日本橋の朝市


歌川広景
江戸名所道化尽 九 湯嶋天神の台
広景の絵は、カッコつけた名所案内じゃなくて、『江戸に生きてた俺たちの、あるあるネタ』なんだよ。だから、つい笑って、シェアしたくなるんだ。
なるほど。時代を超越した『共感性』が、エンゲージメント率を高めている、という分析か。悪くない。
一条が分析する、広景が“バズる”3つの理由
夏目の言う『共感』も、データとして無視はできない。だが、現代のSNSで彼が“バズる”理由は、より構造的なものだ
構造的?
ああ。広景の作品は、現代のSNSアルゴリズムと極めて相性が良い。理由は3つ。
第一に、描かれた『失敗』が、言語や文化を超えて、一瞬で理解可能な視覚的ギャグであること。
第二に、その『あるある感』が、現代のユーザーの共感を呼び、高いシェア率(拡散性)を生むこと。
第三に、『美しい江戸名所』という期待に対し、『滑稽な日常』という裏切りを提供することで、強い印象(インパクト)を残すことだ。
これらが複合的に作用し、高いエンゲージメント率…つまり“バズ”を発生させている。
なるほど……。時代を超えた普遍的な『笑い』の構造が、現代のテクノロジーによって、再発見された、というわけか。面白いね。
篠宮が読み解く、「物語」と「常識」が生む“バズ”の引力
だが、彼の絵の魅力は、単なる『あるあるネタ』だけではない。一条くんの言う『構造的な要因』も、もちろんあるだろう。しかし、私が注目したいのは、『物語』そのものが持つ、時代を超えた“引力”だ。
物語の引力?
そう。例えば、《江戸名所道戯尽 十六 王子狐火》。これは、この土地に古くから伝わる怪異譚……つまり、江戸の人々が共有していた『特定の物語』を、笑いの中に織り込んでいる。


歌川広景
江戸名所道戯尽 十六 王子狐火
王子の狐の物語とは?
大晦日の夜、関東中の狐が王子稲荷神社近くの榎(えのき)の木に集まり、装束を整え行列をなして参詣する。その道中で灯す「狐火(きつねび)」の数や揺らぎの様子で、翌年の農作物の豊凶を占った、という江戸時代から伝わる有名な伝説です。
ああ、この絵、俺の上司も反応していたな。昔、東京都北区の王子に住んでいたそうで、ついでに彼が体験したらしい王子の狐にまつわる実録怪談めいた体験談なんてものを臨場感たっぷりに聞かされたぜ。
ふふ、まさにそれだよ、夏目くん。怪異譚というのは、人の心をざわつかせ、『誰かに話したくなる』衝動を生む。広景の絵が、現代のSNSで強い拡散力を持つ理由の一つは、まさにここにある。……だが、彼が描く『物語』は、それだけではないのだよ。
まだあんのか?
この《江戸名所道戯尽 三 浅草反甫の奇怪》を見てごらん。王子の狐と違い、浅草に特別な狸伝説があったわけではないかもしれない。だが、『夜道で狸に化かされるかもしれない』。それは、当時の江戸の人々が共有していた、一つの『共通幻想(コモン・イマジネーション)』だったはずだ。


歌川広景
江戸名所道戯尽 三 浅草反甫の奇怪
なるほど。特定の出典(ソース)がなくとも、文化的なコンテクスト(=当時の常識)そのものが、『物語性』として機能している、と。
そう。広景は、『特定の伝説』だけでなく、こうした、人々の心の中に漠然と存在する“物語の気配”や“時代の常識”をも、笑いの中に巧みに描き込んでいる。
だからこそ、彼の絵は、我々の無意識に触れ、時代を超えて『ああ、分かる!』という強い共感と、『誰かに伝えたい』という衝動を生むのだよ。
視覚的なギャグ(瞬間的な面白さ)に加えて、物語性(持続的な興味)、そして、文化的常識(無意識の共感)……。複数のフックが、SNS上での滞在時間と拡散性を高めている、という分析か。
そういうことさ。だからこそ、彼の絵は、ただ消費されるのではなく、時代を超えて、我々の心を捉え続ける。……まさに、バズるべくしてバズっている、と言えるだろうね。
【まとめ】太田記念美術館で、君自身の「笑い」を見つけろ
いやー、面白かったな!ただの面白い絵だと思ってたけど、色んな見方ができるんだな!
そうだろう?上で紹介したもの以外にも、このような愉快な作品も展示されている。


歌川広景
江戸名所道戯尽 廿二 御蔵前の雪


歌川広景
江戸名所道化尽 廿七 芝飯倉通り


歌川広景
江戸名所道化尽 十九 大橋の三ツ股


歌川広景
江戸名所道戯尽 三十六 浅艸駒形堂


歌川広景
江戸名所道外尽 四十六 本郷御守殿前
展覧会では、『江戸名所道戲尽』全50点が、8年ぶりに一挙公開されるんだ。君だけのお気に入りの一枚が、きっと見つかるはずだよ。
同じ広重の弟子でもある二代広重の作品20点も見られるらしい!その一部を紹介するぜ。


二代歌川広重
名所江戸百景 赤坂桐畑雨中夕けい


二代歌川広重
東都三十六景 高輪海岸
データによれば、会期は11月14日(金)から12月14日(日)まで。……フン、まあ、私も、彼の作品が持つ『時代を超えるバズの構造』を、もう一度、分析しに行くとするか。
展示情報
| 展示名 | 歌川広景 お笑い江戸名所 |
| 会場 | 太田記念美術館 |
| 会期 | 2025年11月14日(金)〜12月14日(日) |
| 開館時間 | 午前10時30分~午後5時30分(入館5時まで) |
| 休館日 | 月曜日(11/24は開館)、11/25 |
| 観覧料 | 一般 1000円 大高生 700円 中学生以下無料 |
| 公式サイト | 太田記念美術館 |
アクセス情報
- JR山手線 原宿駅表参道口より徒歩5分
- 東京メトロ千代田線/副都心線 明治神宮前駅5番出口より徒歩3分
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