【独自検証】豪造船大手の「韓国買収」承認。日本の最先端護衛艦技術に忍び寄る「情報の壁」の限界【黒木リポート】

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最初の「経済安保」の名の下に撒かれた不信の火種

「経済安保の現実」という名の下に、最悪の火種が撒かれたのではないか。 2025年12月12日、オーストラリアのジム・チャルマーズ財務相が下した、韓国ハンファによる豪造船大手オースタルの買収承認。これは単なる一企業間のM&Aではありません。

写真は海上自衛隊が運用する「もがみ型」護衛艦。オーストラリアで計画されている「新型汎用フリゲート」は、この艦の設計をベースに大型化・重武装化した発展型である。 (出典:海上自衛隊ホームページ)

日本の海上自衛隊が誇る次世代護衛艦「もがみ型(新型FFM)」。その設計思想を受け継ぎ、さらなる重武装化を施した「発展型」を共同開発するはずだった日豪の枠組みが、今、根底から揺らいでいます。

今回の買収承認によって、我々が膨大な国費と歳月をかけて磨き上げた「もがみ型」の根幹技術が、実質的に競合国(韓国)の資本下に置かれる造船所へ提供されるという、看過できないリスクが浮上したのです。

オーストラリア政府の「苦渋の弁明」と野党の猛反発

豪政府はこの承認にあたり、「情報の壁(ファイアウォール)」を設置し、米国のAUKUS機密や日本の技術を厳格に保護することを条件に挙げています。しかし、現地では政府の楽観的な見通しに対し、厳しい追及が続いています。

  • 豪政府の立場: 「外国投資審査委員会(FIRB)の厳格な審査を経て、国家安全保障上のリスクは管理可能であると判断した」と説明。
  • アンドリュー・ハスティ下院議員(野党国防担当): 「同盟国の機密を扱う企業が、競合する外国企業の傘下に入ることで、日本や米国からの信頼を維持できるのか」と激しく追及。
  • ASPI(豪戦略政策研究所)の警告: 専門家らは、日本側が技術流出を恐れて最先端のステルス技術やソナー情報の提供を制限する、いわゆる「日本側の不信感(J-Distrust)」が共同開発の質を低下させると警告しています。

「情報の壁」は物理的な接触を防げるのか

政府が主張する「情報の壁」には、実務上極めて大きな疑問が残ります。

  1. 回避不能な物理的接触: 同じ造船所内でハンファ側の技術者が活動する環境下で、三菱重工業の機密を完全分離することは可能なのか。
  2. 資本の論理: ハンファは水上艦製造における日本の直接の競合です。親会社がライバルである以上、長期的な技術秘匿が成立するかは甚だ疑わしいと言わざるを得ません。

結論:防衛協力の前提は「契約」ではなく「信頼」である

日本政府はこれを単なる「他国の投資案件」として静観してはなりません。 情報保護協定の抜本的な再定義、あるいは最悪のシナリオとして「豪州への技術提供中止」というカードすら検討すべき段階に来ています。防衛協力の根幹は信頼であり、それが揺らいだ状態での共同開発は、日本の国益を損なう結果を招きかねません。


公式資料・リサーチエビデンス

本記事の分析にあたり、以下の一次情報を精査・引用しています。

この記事の案内人のご紹介

黒木重隆  Kuroki Shigetaka

社会課題アナリスト。国際インテリジェンス・安全保障研究所の所長。専門は地域活性化/国際情勢/防災。研究所での知見を活かし、メディア「ゆるなご」に寄稿中。趣味はスパイスカレーと刀剣鑑賞。

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