
ウマ娘史実解説、そのスタンスについて

このウマ娘史実解説は、読者がゲーム「ウマ娘プリティーダービー」のプレイヤー、つまりトレーナーの方々だと想定した記事です。

ウマ娘のゲーム内のエピソードに触れる部分があります。ネタバレ等気にされる方は念のためご注意のほどをよろしくお願いします。

この記事ではウマ娘のキャラクターを指す場合は名前のみ、競走馬を指す場合は「名前」+「号」での表記をして参ります。
エスポワールシチー号の戦績、ざっくり紹介

ではエスポワールシチー号の戦績を、ウマ娘エスポワールシチーのゲーム内エピソードの元ネタも探しつつ紹介していくことにしよう。
エスポワールシチー号の芝レース時代

実はエスポワールシチー号はデビューから7戦、芝のコースを走っていた。しばらく未勝利だったが、やっと6戦目。小倉競馬場にて勝ったものの次のレースで7位となったことを機に、ダートに転向したようだ。

小倉……ウマ娘のストーリーでは冒頭から「プロジェクトK」っていう特別合宿みたいなものに放り込まれるんだよな。このKってもしかして……。

ああ。おそらく「小倉レース場(競馬場)」のKだろうな。

ゲームの都合上、ダートレースからストーリーを開始するための工夫ってところかな。そしてその地でウマドルの仕事をこなしているスマートファルコンと遭遇するのだよね。これも何か元ネタがあったりするのかい?

それもデータにある。先に述べた7位となった芝のレース。これは2008年8月10日のレースなのだが、奇しくもスマートファルコン号が同日、小倉の別のレースで勝利しているんだ。
エスポワールシチー号、ダートに転向

ダートに転向後、怒濤の快進撃が始まるんだな、ワクワクするぜ!

ここからはエスポワールシチー号の勝利レースと、それ以外はウマ娘実装の競走馬との対戦を紹介していくぞ。

ちなみにゲーム内のメイクデビューは「ダート・1700・小倉」との表記があるのでエスポワールシチー号の8戦目、初のダートコースでのレースがモデルとなっていると思われる。
2009年5月5日 船橋のJpn1レース かしわ記念

JpnI初制覇はこの船橋でのレース。フリオーソ号も参戦していて、5着だった。

その後、翌年のかしわ記念までJpnI、G1を5連勝。以下、勝利G1レースの映像を紹介しておく。
2009年12月6日 G1レース ジャパンカップダート2009

このレースにはワンダーアキュート号も出走していたんだね。
2010年2月21日 G1レース フェブラリーステークス
エスポワールシチー号、世界への挑戦。受け継がれる想い

そして2010年11月7日。アメリカのダートレースである「BCクラシック」にチャレンジすることになる。しかしこの時代、日本で調教された競走馬が海外のダートレースで勝った例はなかった。

エスポワールシチー号も、12頭立てで10着。惨敗といって良い結果だった。

でも、その後……。2021年、マルシュロレーヌ号がアメリカのダートG1レースであるブリーダーズカップ・ディスタフで勝利したことを皮切りに、どんどん日本のダート馬が海外G1レースで勝っていくようになっていくのだよね。

2023年のサウジカップ(パンサラッサ号)、ドバイワールドカップ(ウシュバテソーロ号)……今年2025年もサウジカップでフォーエバーヤング号が勝利しているし……。

エスポワールシチー号による10年以上前の挑戦の経験が今、日本の競走馬による世界のダートレースでの勝利に生きていると思うと……感慨深いものがあるね。
エスポワールシチー号、再び日本で活躍。ライバルたちとの激戦

帰国後、再び日本に戻ったエスポワールシチー号だが、ここから4戦はウマ娘にも実装の名馬たちとの戦いが続く。

まずは2011年3月21日の名古屋JpnIIIレース、名古屋大賞典。ここではワンダーアキュート号に勝利するものの……。

2011年5月5日かしわ記念はフリオーソ号に、2011年6月29日帝王賞競争でスマートファルコン号に、2011年10月10日マイルチャンピオンシップ南部杯ではトランセンド号に連敗しちゃうんだな。
2011年10月10日 マイルチャンピオンシップ南部杯(勝利馬:トランセンド)

その後も勝ったり負けたりを繰り返しつつもほぼ3着以内の成績を収めていたが……主戦騎手である佐藤哲三ジョッキーが2012年11月24日に落馬事故で怪我を負ってしまう。

ああ……その後、エスポワールシチー号の引退まで、別の騎手が手綱を取ることになったんだね……。

その代役の一人、後藤浩輝ジョッキーは2013年10月14日のマイルチャンピオンシップで勝利しているが、その時の2着はホッコータルマエ号だった。

おっ、この時のホッコータルマエ号に騎乗していたのは幸英明ジョッキー(※)だったんだな。
※幸英明ジョッキーは「ウマ娘史実」シリーズの第一回で取り上げたスティルインラブの主戦騎手でもありました。

引き続き、エスポワールシチー号と後藤ジョッキーは、2013年11月4日の金沢でのレースJBCスプリントでも勝利を挙げている。
2013年11月4日 JBCスプリント

その次のG1レース、ジャパンカップダートで7着に終わったことを機に引退し、種牡馬となっている。

以上、戦績をざっくりと紹介した。
エスポワールシチーの母、父そして弟

それでは次は私の担当だね。エスポワールシチーの育成シナリオでは、家族とのかかわりが大きく描かれていたけれど、それぞれこの実馬エピソードが元ネタではないかと推測されるものを挙げていくよ。
エスポワールシチーの父の元ネタとは?

エスポワールシチーの父親のモデルとしては、一つは少なくともエスポワールシチー号の父馬であるゴールドアリュール号だろう。

おっ、産駒はウマ娘に実装されている競走馬を挙げても
スマートファルコン号、コパノリッキー号と、
ダートで活躍する馬を輩出しているんだな!

「ダートウマ娘の指導に実績がある」という設定はここから来ているのではないかと考えられるな。
エスポワールシチーの母の元ネタとは?

母か……ウマ娘のエスポワールシチーの母は、育成シナリオで割と言及があったと記憶している。

病弱な母親のために活躍せねばとの必死な思いが原動力、っていう感じだったよな。

うん。実はエスポワールシチー号は難産の末に産まれた仔だったそうで、その後の出産は難しいのではないかと言われるくらいの状態だったそうなんだ。

……まさか……。

うん、ご想像の通りだよ。馬主は母馬・エミネントシチー号を処分するよう生産牧場に伝えたらしい。

……外野からすると辛いけど、馬主の方としてはそう判断せざるを得ないことだってあるよな……。

そう。しかし生産牧場側は、実は彼女を匿っていたんだ。

えっ

なるほどな。先に紹介したように、エスポワールシチー号の破竹の勢いでの活躍を受けて……。

ああ。実はエミネントシチー号は生きていると馬主に伝え、その後も彼女は繁殖牝馬としての活躍を続けることになったのだそうだ。
エスポワールシチーの弟の元ネタとは?

エスポワールシチーの家族といえば、弟についてはどうなんだ?

弟など描写があったか?

サポートカード(※)のフレーバーテキストには言及があったぜ。家族LANEでの会話に参加していたはず。
※エスポワールシチーのサポートカード「約束のglitter」

そうだね……おそらくエスポワールシチー号が活躍したことで再びエミネントシチー号とゴールドアリュール号との交配が実現して産まれた、つまり全弟であるプレジールシチー号がモデルではないかなと考えているよ。
トレーナーの「ノート」とキャラ付けの元ネタとは?

そういえばエスポワールシチーの育成シナリオ内の重要な小道具であるトレーナーがつけている「ノート」。これは過去のウマ娘エピソードには無かったと記憶している。
この元ネタなどは俺のデータには無かったが、誰か調べているか?

あ、そういえばそうだね、失念していたよ。調教師のエピソード等だろうかね。

フフ……実は俺、見つけちゃったんだよな。何故ウマ娘エスポワールシチーがあのようなキャラクターとなったかすら解き明かす鍵がここにあると見たぜ!

本当かい?

ああ。佐藤哲三ジョッキーがエスポワールシチー号の引退の際に競馬メディアのインタビューに答えた中に……。

「教科書」「(エスポワールシチー号を)騙し続けて」
という単語が見られるんだ。

なるほど。育成シナリオ内に、そのノートを教科書と言い換えるシーンも、エスポワールシチーを最強だと鼓舞してトレーニングするシーンもあるな。

はは、そんなトレーニングをしてきたから自分のことを嫌っていたようだということも話しているね。ここが反抗的な態度をとるウマ娘というキャラ付けの参考になっているとも取れるかもしれないね。

そうそう。詳細は元の記事をぜひ読んでみてほしいんだけど、着想の元の一つになってそうな文献といえるかもしれないよな。
2025年も産駒がレースデビュー。「最強のウマ娘」モデル馬・エスポワールシチー号の挑戦は続く

そういえば2025年9月にも、エスポワールシチー号の産駒(※)が新馬戦を勝利しているんだよな!しかも4馬身差!
※クリムゾンキャット号

今もなお、エスポワールシチー号の最強への挑戦が続いている……そう思えるね。

「あーし、最強!」は、伊達じゃないといったところだな……。

……。

……。

何か?

次回の「ウマ娘史実解説」も、お楽しみに〜!
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