株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは2025年11月28日、店頭への「ペットボトル回収機」の設置を全国47都道府県すべてにおいて完了したことを発表しました。
2015年の実証実験開始から約10年を経て、設置台数は4,451台(2025年10月末時点)、累計回収本数は7億7,000万本に到達しています。本件は、小売業が店舗網という「インフラ」を活用し、消費者参加型の資源循環(サーキュラーエコノミー)を社会実装した大規模な事例と言えます。
本記事では、同社の取り組みにおける「資源循環の仕組み」と、今回発表されたベネッセコーポレーションとの連携による「次世代教育(啓発)アプローチ」について解説します。
インフラとしての「ボトル to ボトル」リサイクル
同社の取り組みの核心は、回収したペットボトルを再びペットボトル飲料として商品化する「ボトル to ボトル」の完全循環モデルを構築している点にあります。
2015年当時、国内で排出される使用済みペットボトルの多くが海外へ輸出されていた状況に対し、同社は「国内での資源循環・処理」を企図して本プロジェクトを開始しました。環境省の省CO2型プラスチック高度リサイクル設備導入事業としても位置づけられており、単なる廃棄物削減に留まらず、CO2排出量削減と国内資源の有効活用を目的としています。
特筆すべきは、このシステムを持続可能にしている資金スキームです。同社は、レジ袋代金における「本部収益相当額」を、ペットボトル回収機の設置費用の一部に充当しています。これは、プラスチック削減(レジ袋有料化)によって生じた収益を、別のプラスチック対策(リサイクルインフラ)へ再投資するという、企業の社会的責任(CSR)を具現化した資金循環モデルとして評価できます。
異業種連携による行動変容の促進
ハード面(回収機)の全国配置完了に伴い、同社はソフト面(利用促進・啓発)の強化フェーズへ移行しています。その象徴的施策が、2025年12月3日より開始される株式会社ベネッセコーポレーション「こどもちゃれんじ」との連携です。
キャラクター「しまじろう」を起用した動画コンテンツを展開し、未就学児や小学校低学年の層へアプローチを行います。これは以下の2点において戦略的な意義を持ちます。
- 環境教育の早期化 幼少期からリサイクル行動を習慣化させ、「もったいない」という倫理観を醸成することで、将来的な環境配慮型消費者を育成する長期的な投資です。
- 親子層の巻き込み 子供の関心をフックとして、購買決定権を持つ保護者層(30-40代)の環境意識を高め、実際の来店と回収機利用(およびnanacoポイント付与によるCRM強化)につなげる狙いがあります。
結論:地域拠点が担うSDGsのプラットフォーム化
セブン‐イレブンの事例は、コンビニエンスストアが単なる「販売拠点」から、地域社会における「環境インフラ(中間支援拠点)」へと機能を拡張させていることを示しています。
NPOや地域団体にとっても、こうした企業のリソース(店舗、回収機、ポイントシステム)を地域の環境活動とどのように連携させていくか、新たな協働の可能性を示唆するニュースと言えるでしょう。
【参照元】 株式会社セブン‐イレブン・ジャパン プレスリリース(2025年11月28日) セブン‐イレブン ペットボトル回収機設置店舗一覧:https://www.sej.co.jp/csr/recycling_list.html
