みなさんは、とろけるような甘みとプリプリの食感がたまらないボタンエビを召し上がったことはありますか?
料亭や高級寿司店でしか出会えないこの高級食材は、実は漁獲量が非常に少なく、なかなか手に入らないのが、私たちにとっては歯がゆい現実です。
そんな中、茨城県水産試験場が、この「ボタンエビ」の養殖技術の開発に、国内で初めて成功したと発表しました。この技術が確立すれば、いつかボタンエビがもっと身近な存在になるかもしれません。
なぜボタンエビの養殖は大きなニュースなのか?
ボタンエビは「甘えび」と同じタラバエビ科に属する深海性のエビで、身は甘く、食感が良いのが特徴です。その希少性から、市場では高い価値で取引されており、安定した供給が長年の課題となっていました。
今回の養殖技術の確立は、この課題を解決する大きな一歩です。将来的には、2024年に誕生した養殖ブランド「常陸乃国まさば」に続く、茨城県の新たな養殖ブランドとして地域の活性化に貢献することが期待されています。
開発された技術の詳細:私たちの食卓へ届けるために
今回の成功は、5年間にわたる研究の末、以下の2つの核となる技術によって実現しました。
- 養殖種苗の生産技術: 天然の抱卵エビを採集・運搬し、養殖に適した種苗を育成する技術が確立されました。
- 養殖技術: 陸上養殖に適した「半閉鎖式循環システム」を使い、出荷サイズである体長10cmまで育成することに成功しました。これにより、「天然に勝るとも劣らない」品質の高いボタンエビの養殖が可能になりました。
今後は、2026年度にかけて、生産コストの削減や飼育作業の自動化・省力化に向けた試験が行われます。その後は、この技術を希望する県内の事業者へ移転する計画です。
この技術移転によって、県内各地でボタンエビの養殖事業が広がり、新たな雇用創出や、地域経済の活性化に繋がることが期待されます。幻のエビが、いつか私たちの街のスーパーに並ぶ日も夢ではありません。
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